シェア住居の社会的意義

シェア住居白書の制作をお手伝いしていました、見立(ミタテ)と申します。 ここでは、シェア住居の持つシェア居住であること、家賃が低廉であること等の特徴から生まれるシェア住居の社会的意義について書きたいと思います。

実際にシェア住居に住んでいらっしゃる方には、そんなのあたりまえじゃん、というようなことばかりかもしれません。しかし、このような社会的意義のあることが当然に成立してしまっているシェア住居のほうが社会一般から見れば特異なのであって、注目すべき点なのだと言えるでしょう。

1. コミュニティー新生装置

シェア住居では、シェア居住であるがゆえに、日常生活の中で自然と居住者間のコミュニケーションが発生します。そのシェア住居に入居しなければ出会わなかったであろう人との交流が生まれることになるのです。しかも、その交流は仕事の業種や世代を超えたものであって、各個人が背負ってきた家族や友人、会社のつながりではないところに、コミュニティーが生まれます。

居住者の方々へのインタビューでは「帰ってくると、おかえりと言ってくれる人がいて嬉しい」「職場から帰ってきて仕事の悩みを居住者に聞いてもらう」等の意見が多く聞かれ、既にシェア住居を出て行った人ともメールで連絡を取り合って会っているという例も多く見られました。このように都市居住を豊かにするコミュニティー新生装置としての機能がシェア住居にはあると言えます。

ただし、この交流は当然強制されるものではないので、自ら積極的に居住者間でコミュニケーションを取りたい人は日常生活を楽しくすることができる機会がシェア住居にはある、ということです。一方で家賃の安さ等、経済性・利便性だけを重視してシェア住居に入居している居住者も多いです。この居住者自らの交流への参加の選択性があることがシェア住居の良さとも言えるでしょう。また、当初はシェア住居の経済性・利便性に惹かれて入居したものの、居住者間のコミュニケーションが楽しくて、ずっとシェア住居に住んでいる、という意見も多く聞かれました。

このようなコミュニケーションの中で、シェア住居に入居してできる友人も多く、それがシェア住居生活を楽しくするものでもあります(下図)。

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(6-1-2) シェア住居に入居してできた友人の人数

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(6-1-1) シェア住居生活を楽しい・楽しくないと感じている比率

「若い世代の最大の義務的支出項目である住宅費に、シェア住居では娯楽費の性格が加わる」というお話が運営事業者の方へのインタビューで印象的でした。しかし居住者間の交流が盛んな物件と、そうでない物件の差が大きいことも事実です。入居者の交流に対する姿勢によって、それぞれに適したシェア住居を選択できることが重要になります。そのためには、入居前の内見で物件の入居者や雰囲気を把握することが大切です。

2. 夢のあるアフォーダブルハウジング

またシェア住居には、その比較的安価な家賃のため、アフォーダブルハウジングとしての機能があります。下図のように、ワンルームマンション等に比較して安価(最近のシェア住居はワンルームマンションと比較しても賃料の高いものも増えてきてはいますが)、かつ1ヶ月以上という新しい需要層に対応していることが分かります

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すまいろん2007春号 特集「今、なぜシェア居住か ビジネスモデルとしてのシェア居住の可能性」を参考に作成

居住者の前住所地は全国にわたっており(下図)、単身者向け住居であるため当然ではありますが、地方出身者が多くなっています。家賃が安く敷金・礼金が不要なことが多いため初期費用も安く、シェア住居は地方から東京へ出てくる際の負担を軽くしているのです。このように、単にアフォーダブルな住居であるだけではなく、地方から東京に出てきて何か挑戦したい、という若い世代を支える機能もシェア住居は持っていると言えるでしょう。

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(5-2-4) 国内からの入居者の前居住地域分布

インタビューでも就職を機に上京してきた方々、役者を目指す方がいて、この点を強く感じました。また海外に行きたいと考えている居住者の方も多く、地方から東京へという志向だけではなく、さらに海外にまでその志向は延長していっていることも感じられます。

3. 都心居住の促進

下図を見ても分かるとおり、シェア住居は都区内に多く立地し、駅から徒歩圏内の好立地にあることが多くなっています。この結果、居住者の通勤時間も短縮され、15~30分が最多となっています。このように、シェア住居は都心居住を促進し、職住近接を実現しているものと言えるでしょう。

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(3-1-2) 地図で見る増加状況の変遷

都心居住を謡うマンション等は近年増加していますが、高い家賃が一般的であることを考えると、比較的安価な家賃で都心居住を実現できるシェア住居は、若い世代が都心に住まい、都市機能を享受さらには都市の活性化に寄与できる可能性を与えるものとして存在価値が高いと言えます。

また、シェア住居は初期費用が安価で家具付きのため、引越しが容易で異なるシェア住居間を移動する入居者も見られました。このように仕事の状況等によって頻繁な移動を伴う都市居住というありかたは、これまでにはあまり見られなかったものであると言えます。

4. 滞在外国人の住居問題の解決/日本人との交流

東京で外国人の方々が生活を始めるにあたって、まずぶつかる壁が住宅探しの問題です。シェア住居はその源流が外人ハウスにあり外国人の入居に寛容であるため、外国人の居住問題の一定の解決策として機能してきました。そして今後も入国者数・外国人登録者数が増えていくと予想される中で、この機能の存在価値は依然として重要なものであり続けるでしょう。

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法務省入国管理局『外国人登録者統計』より作成

また、シェア住居の大きな特徴には、外国人と日本人が一緒に住むことになるというシェア居住特有のものがあります。その結果、下図からわかるように意欲さえあれば外国人の日本語習得にシェア住居は有効であることが言えます。また1人以上の外国人の友人ができた日本人居住者の割合が77%となっており、その国籍も世界中にわたっていることがわかります。

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(9-1-4) シェア住居で生活する事により、日本語が上達したと感じている比率(意欲別)

このようにシェア住居においては、日常生活において外国人居住者と日本人居住者が接する機会があるため、日本人との交流を望む外国人にとっては最適な環境であると言えます。インタビューにおいては、バウハウス高円寺の居住者の方の「日本語がもっとうまくなったら、日本のデザイン系の会社への就職もチャレンジしたいと思うようになりました。」という言葉が印象的でした。シェア住居で日本語を習得しコミュニケーションが楽しくなることで、日本で働くということも選択肢に上がってくる。そんな心境の変化も生まれ得るのです。

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(9-2-4) シェア住居でできた外国人の友人の国籍分布

5. 中古不動産の活用

シェア住居づくりにおいては、費用を抑えるために中古不動産を改修することがほとんどで、新築は増えてはいるもののまだ数えるほどです。そのため、スクラップ&ビルドが一般的な日本の建設・不動産状況においては珍しく中古不動産をフル活用しているということも社会的意義として挙げられます。

シェア住居白書のインタビューで伺った物件で言えば、山晴荘のように古い物件にあまり手を入れずに古いがままの建物の良さを残している物件もあれば、バウハウス高円寺のように絶妙なリノベーションによって古くも現代的な空間を提供しているシェア住居もあります。

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バウハウス高円寺 ※オシャレオモシロフドウサンメディアひつじ不動産掲載写真より

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山晴荘 ※オシャレオモシロフドウサンメディアひつじ不動産掲載写真より

特に最近はリノベーションによってシェア居住そのものを付加価値とした物件が増加中です。ワンルームマンションを代表とするようなプライバシーを重視し、「個」を尊重するような単身者向け住居がこれまで一貫して新築し続けてきた日本において、シェア住居のような「共」を尊重し既存建物を利用するあり方は、非常に特異でワクワクするものがあります。日本の不動産業界を草の根から元気にする、そんな機能がシェア住居にはあるのではないでしょうか。

シェア住居の社会的意義について、(1)コミュニティー新生装置、(2)夢のあるアフォーダブルハウジング、(3)都心居住の促進、(4)滞在外国人の住居問題の解決/日本人との交流、(5)中古不動産の活用と見てきました。

これらの機能はシェア住居のシェア居住であること、家賃が比較的安価であること、外国人入居者へ寛容であること等の特性から派生しているものです。

これらの特性は乱暴に言ってしまえば、シェア居住とすることで貸室面積を増やすことができる、外国人を受け入れることで需要者層を増やすことができる、といった運営事業者側の収益追求の結果であったとも言えます。しかし、運営事業者の参入動向において「国際貢献・社会貢献になる」「シェア住居運営が面白そう・楽しそうだったから」という回答が多かったことから分かるように、単に収益追求だけではなく、シェア住居という住居形態の面白さ、居住者と運営事業者の特有の関係性、運営事業者が上記のような社会的意義の存在を誇りに感じていること等が運営事業者を突き動かし、現在のシェア住居の状況を作り出していると言えます。

シェア住居は人間性を持った賃貸住居としての収益性の追求と社会的な厚生が同時に両立する稀有な特性を持っているのではないでしょうか。

2008.06.14.

なかのひと