第3項 運営事業者の果たす役割

シェア生活における経済的リスクの肩代わり

DIY型運営と事業体介在型運営の大きな違いの1つが、入居者の契約形態です。

先に述べたように、DIY型運営では個人をベースとした相互扶助的な関係が主流となっており、代表者の個人的な都合によるシェア生活の終了や、入居・退去状況の変動に伴う賃料負担の増減といったリスクを入居者自身が常に抱えています。

一方事業体介在型運営の場合は運営事業者が事業の器として一括して物件の買い上げ・借り上げを行い、各入居者は運営事業者との間で個別に賃貸借契約を締結する形態が一般的です。

この枠組みにより、実際にシェア生活を営む入居者は、下記のような経済面でのメリットを得ています。

  1. ベース物件全体を借り上げる際の敷金・礼金や設備投資等を直接的に負担しなくて良い。
  2. 他の入居者の入居・退去に伴う賃料負担の変動リスクを負担しなくて良い。

ただし運営事業者が介在する事により、DIY型運営と比較して事業体介在型運営の賃料相場は若干高めであると言われる場合もあります。

事業体介在型運営のシェア住居の人気は、そのようなコスト増を考慮に入れても運営事業者が介在するメリットを多くの入居者が認めている証明であるとも考えられます。

シェア生活における運営負担の肩代わり

運営面においてDIY型運営と事業体介在型運営が大きく異なるのは、シェア生活特有の様々な負担となる事柄を運営事業者が事業競争上のサービスの一環として提供・解決している点です。

DIY型運営では、価値観や生活習慣の異なる複数名でのシェア生活を運営してゆくために、様々な課題や問題に対し、当事者同士のコミュニケーションによって対応してゆく事が必要不可欠です。

これらは人によっては充実した工程であるとも言えますが、少なくとも多くの人がシェア住居での生活の経験を持たない現時点で誰もが気軽に活用できる枠組みであるかと言えば、疑問であると言わざるをえません。

一方事業体介在型運営においては、シェア生活特有の様々な負担を、運営事業者がサービスとして一定量肩代わりしてゆく構造となっています。

大掛かりな家具や家電設備が共用部に備えられているため、シェア住居においては入居者は比較的容易に転居が可能です。このため、運営事業者は入居期間を長期化し稼働の安定化を図る課題を常に抱えており、入居者の円滑で快適なシェア生活の実現を支援する事に、事業運営上の重要な動機が存在します。

コミュニティ管理

運営事業者の業務は一般に入居者の募集、審査に始まり、共用設備のメンテナンス、清掃、各種設備の利用ルールの設定・周知等、非常に多岐に渡るのが特徴です。

また、一部で“コミュニティ管理”と呼ばれる業務もまた、運営事業者の大きな役割と言えます。入居者同士や入居者と運営事業者の関係性・距離感に配慮しつつ、ストレスの少ない生活環境を提供してゆくコミュニティ管理の業務においては、従来のアパート/マンション管理とは大きく異なる入居者に対する人間的な対応能力が広く要求されます。

このように、事業体介在型運営のシェア住居においては運営事業者の介在が入居者の様々な負担を一定量軽減し、経済面、信用面、心理面におけるシェア生活のコストを下げる事に繋がっています。

ただし、これは運営事業者の運営能力に日々の生活の快適性が大きく左右されるという事でもあります。シェア住居の運営は一般の不動産管理とは異なる独特なノウハウを要する部分が多く、市場の拡大期には新規参入の運営事業者による提供物件の比率が増加し、その成熟までの期間、市場に一定の混乱が生まれる可能性も存在しています。

市場の拡大を積極的に牽引する役割

これまでに述べてきたように、事業体介在型運営のシェア住居の市場においては、運営事業者が営利の事業モデルを背景に快適なシェア生活を実現するための様々な負担を一定量肩代わりする点が大きな特徴となっていますが、営利事業である事は市場の普及・拡大においても大きな意味を持っています。

入居者の経済的リスクの肩代わりの部分でも触れたように、シェア住居ではその初期費用負担が大きな障壁となりますが、事業体介在型運営の場合は営利の事業モデルが確立されている事により、この部分のリスクテイクを運営事業者が実質的に肩代わりし、積極的に提供物件を拡大するサイクルが確立されています。

また、事業モデルの確立により健全な競争が生まれ、市場に供給されるシェア住居物件の品質向上を促進している側面もあります。営利モデルによる競争の存在は、草の根的な広がりを基本とするDIY型運営と事業体介在型運営のシェア住居との大きく異なる点であると言えます。

シェア住居の普及拡大の中で運営事業者はシェア生活における経済面、運営面の様々な負担やリスクを引き受け、その円滑な実現、活用を支援する非常に重要な役割を果たしています。

なかのひと